皆さまはじめまして。ワタクシ、シェリーと申します。どう言ったらよろしいのでしょうか。普段はメイドとしてトラウィス学園の雑務を粛々と行っています。 本日はワタクシの1日の『一部』をお見せします。
ワタクシの朝は寮の可愛い生徒たちを起こす所から始まります。朝ごはんの準備はもうしていただいているので本日彼らを起こすのはワタクシの役割です。
「あ! シェリーおはよなの!」
「あらリリア様、おはようございます」
この方はリリア・サリス様です。え? 知ってる? そうですか。リリア様はいつも早起きをしています。只今の時間は授業開始の3時間前。真面目な態度にワタクシ感動しています。
「今日も早いですね」
「うん! センセが言ってたの。『早起きはなんでも得』なんだって」
「なんでも……得?」
「まあ早起きしてたらいいことあるらしいの! だから早起きは大事。さーてイタズラの準備準備っ!」
リリア様、いえザイン先生はワタクシの主人よりも博識な方で異国の言葉の知識が豊富なのです。しかしそれを受け取る側の頭がよろしくないと……こうなります。
ですがワタクシの辞書にも引っかからない言葉なので後で本人に聞いてみようと思います。
「さて、お掃除しますのであとはよろしくお願いします」
お寝坊さんな生徒達を扉をノックして起こし、朝ごはんを食べさせた後、次は掃除になります。生徒達がいない間に洗濯物を回収しながら寮部屋を徹底的にお掃除します。
生徒全員の部屋を掃除するのか? はい、もちろんです。ワタクシが男子寮、女子寮の全ての部屋をチェックし回ります。辛くないのかとよく聞かれますが、ワタクシは全く辛くありません。
「まあっ」
なんていう本をベッドの上に! ううっ、そういった本をお片付けするのも役目ですから。辛くないですとも……。
えっちな本は一体どこからここに入ってくるのでしょう。別に構いませんが、少しは隠す努力をしてほしいのです。……うう。
寮の中のお掃除が終わりましたら少しの休憩の後、校内のお掃除を見回りになります。
学校を綺麗にするのもメイドであるワタクシの役目でございます。
「シェリーさんみっけ!」
「っ!?」
「ほら白じゃん!」
「黒かと思ったのによー」
後ろから走ってきた生徒たちにスカートを捲られてしまいました。しかし平常心平常心。表情1つ変えず仕事をするのもメイドの嗜みでございます。
スカート位どうも思ってないです。『いつもよりマシですから』
「なっ!?」
「シェリーさんお掃除より俺達とお茶でも飲みましょうよ」
「そうそう。そっちの方が楽しいぜ」
「わ、ワタクシは仕事が残っていますので他を当たってください」
「つれねえなあ」
ほら来た今日も来ましたよ。……お尻を触らないでください。最近『セクシャル・ハラスメント』が増えております。一体何故でしょう。 彼らを無視してお掃除を再開します。彼らはつまんないと言ってどこかに行きました。
「あ」
「む、シェリーか。ちょうどよかった」
お掃除の帰り道にワタクシはザイン先生と鉢合わせしました。ザイン先生はワタクシの『ご主人様』の友人なのです。
「どうしました?」
「うむ。アイツに明日飯食いに行かねえか? と伝えといてくれ。お前も来ていいぞ」
「……ああ。投票発表来たんでしたっけ」
「まあそういう事だ。さっきリクに声をかけてきたんだ。今から旧校舎に行くところだったからちょうどよかった」
ザイン先生は人懐っこい笑みを浮かべます。この方は文芸部と新聞部が合同で発行している【バロン・フォト】で人気なのです。
毎回の雑誌に投稿、掲載された写真の人気投票で首位を取り、食事券を獲得し、いつもご主人様やワタクシまで誘いご飯を食べに行っています。
そしてワタクシもいいタイミングでザイン先生に会いました。
「伝えておきます。それと」
「? 何だ?」
「『早起きはなんでも得』とは何ですか?」
「……は?」
ザイン先生、凄く呆れたような表情がよく似合います。
「あら1号、遅かったですね」
「すみません3号、あとはお願いします」
「おつかれさま。それより早くメンテナンスに行ってください。ご主人様が待ちかねています」
「そうですね」
ワタクシはバトンタッチを相手と交わし、旧校舎に向かいました。地下への階段を降りると、ご主人様がお待ちかねです。
「遅れて申し訳ありません、ご主人様。ザイン先生と鉢合わせいたしました」
「あぁ別に構わねえよ。さっきまで3号といたし。ほら来い1号。今日の報告を頼むぞ」
「はい」
ワタクシはシェリー。この学園のメイド。この学園に、アリス様に尽くすメイドのロボット―――