彼は唯一の協力者だ。彼との時間が一番俺の休息となる。計画は順調――
「ジーク」
「んが、フウガセンセじゃないか」
俺は学園の図書館にコップを持って入って行く。入口傍のカウンターには眠そうな目を見せる銀髪の男ジークが座っていたので話しかけると即俺の方を向きニカッと笑った。
「コーヒーくれ」
「自分のトコの準備室で勝手に淹れてろって僕はいつも言ってるよな? というか図書館内は飲食禁止」
「別にカウンターで飲むから許されるだろう」
「だからここで飲む生徒が後を絶たないんだよって前話しただろ? な?」
職員会議でも聞いた気がするが最近図書室ではカウンター前で飲み物を飲んで戻って行く生徒が後を絶えないらしい。ジークはそれを俺のせいだと何度も言ってくる。別に本にシミつける事も無いから問題ないんじゃないかなと思うがどうやら自分がサボれないからという理由がメインらしい。
「じゃあ毎朝俺の家でコーヒーを淹れてくれないか」
「人に誤解される表現やめろともいつも言ってるよな? 本気にされるぞ? 僕じゃなくて周りがな」
「ふむこれもNGなのか。ジークは心が狭い」
彼の淹れるコーヒーは俺が適当に淹れたやつより美味い。だからよく貰いに来るのだが……まあ彼の言い分も分からないことも無い。
だからと言って引き下がるのもここに来た意味がない。少し遊んで帰ることにしようと思ったが先手を打たれた。俺の耳元でぼそと喋る。
「で? リリアちゃんとはどうなんだ?」
「お前も周りに誤解される表現はやめろ。……こっちによく来てるだろ?」
「まあアンタさんが掃除させようとするからなあ。余計なお世話だよ」
「あのイタズラ娘を更生させるためだ」
「させる気ないくせに」
ジークの言葉に俺は眉を顰めるような動きを見せてしまったが即咳ばらいをし取り繕う。
あの子はいつもイタズラばかりする。一度痛い目には遭っているのだが辞めるつもりは無いのだろう。別に構わないが色々後片付けする身にもなってほしい。
「まあアンタさんは甘いもんなー。僕だったら無理やりにでも更生させるよ。よく分かんないけど」
「甘やかしているつもりは無い。もしそうだと言うのなら俺にコーヒーをくれないか」
「強引に話題を変えるなぁアンタ! ……って図書館はお静かに」
大きい声を出しているのはジークだけなのだがと言おうとしたがやめておこう。周辺の視線が非常に気になるので引き上げたいのだ。
「まあアンタさんが来ることは事前に知っていた。先程裏で準備しておいたから勝手に飲んで帰ればいい」
「分かってるじゃないか。いつもすまんな」
「突くなよー。ははは」
「はっはっは」
現場に居合わせた生徒たちは男2人の頬の突き合いという異様な風景を見ている。
本人たちは何も考えず戯れているだけだったが勿論その中には雑誌バロン・フォトの関係者も居合わせていた――